誰にも書ける一冊の本
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父が母に託した自伝小説の原稿。 それを主人公の長男が受け取り、読み進めていく。 主人公は小さいながらも広告制作会社を営んでおり、小説も書いていた(売れてない)。 物書きとして父の原稿を見てみると、自慢話じみた内容、もしくは創作話の類だと思っていた。 そして、加筆修正して一冊の本にするつもりだった。 が、そこに書かれていたこととは・・・父が語ることのなかった遠い昔の父の真実の姿だった。 生前に父と子として語り合わなかったことが後悔させられた。 父の亡骸の横で完読に至り、父の壮絶な過去と死因を知った。 父はこれを、背中だけを見せて語らなかった罪滅ぼしのように、家族に書き遺したのだ。 言葉でなければ伝わらないことがある。 自分も父のように自分がこの世に存在したことを書こうと思ったのだった。 題名とは裏腹に書けそうで書けない、そう思った。 |