ノエル: a story of stories

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美しくも哀しい、上質の物語はいかが?
一人の絵本作家が取り持つ連作ストーリーでした。
三章仕立て+エピローグという構成。

・「光の箱」
男子は級友からのイジメと暴力をかわすために物語を作った。
女子は父親からの性的虐待をかわすために絵を描いた。
二人は中学で出会い、物語と絵を組み合わせた絵本を作った。
高校も同じで、親密な関係が続いていたが、あることがきっかけで終止符を打つ。
時は流れ、紆余曲折ののち二人は結ばれ、男は絵本作家として名を上げた。
彼の書いた作品と、彼の人となりが後の二作品へと綺麗につながっていく。

・「暗がりの子供」
妹の誕生で自分の居場所が無くなるんじゃないか、祖母が病気で死んじゃうんじゃないか、と不安に陥る少女が絵本に救いを求めるお話。

・「物語の夕暮れ」
夫婦で小さな子供達の為の読み聞かせのボランティアをしていた。
ところが数ヶ月前に最愛の妻を亡くし、生き甲斐を見失ってしまった。
男は元教師で後追い自殺を考えていた。
そんな時に自分が過去に住んでいた家に絵本作家夫婦が住み着いていたことを知る。
最後のワガママな願いを、その作家に依頼する。

絵本作家が書く物語が、読んだ人の人生を変えていく。
ぐるっと巡って輪が繋がる。
エピローグまで読んで、この作品の世界観の全てが見渡せる。
そんな作品が実に綺麗にまとまっている。

う〜ん、道尾さんすっかりホラー作家イメージを払拭しましたね。