ムーンナイト・ダイバー

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読了。

天童さん、久々の単行本。
いやぁ、良かったよ。
感情移入しちゃいますね。

作品は、震災から5年目の福島第一原発沖合の海に非合法で潜るダイバーのお話。
有志を募って、あの日に津波でさらわれた者たちの遺品を探してもらう。
ただし、貴金属・宝石類、腕時計、財布などは引き上げない。
盗人の疑いを掛けられないためのルール。
たとえおもちゃの類でも。
そんな中で、依頼者とダイバーが直接会うことを禁じていたのにダイバーの前に突然現れた若い未亡人。
夫の指輪を探さないで欲しいと言う依頼。
ダイバーもまた肉親を失っていたので痛いほど理解できるのだが。。。。

残された者、生者の想い、葛藤、生と性。
あらゆるものを飲み込んで破壊し尽くされても人は生きる。
生きていく。
時間は掛かっても、拠り所を求めて、或いは諦めて、いろんな後悔と希望とがないまぜになって。
月明かりが薄く差す海底で鎮魂の想いを捧ぐ。
表紙絵(写真)が美しい。