川の深さは

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作中の情熱度を計る尺度として川の深さが用いられてる。
それが原題の元。
だが、読み進めていくうちに違う意味が滲み出てくる。
川は、全てを呑み込み、留まることを知らずに流れ流され、やがて母なる海にたどり着いて浄化される。
まるで方丈記の冒頭のようだ。


内容は、なかなかハードで専門用語もバンバン出てくる。
日本を震撼させた阪神淡路大震災サリン事件のころを時代背景に、サリン事件を地下鉄爆発事件に置き換え、背後に暗躍するCIAや北朝鮮工作員、それに警察、公安、自衛隊を巻き込んだ混沌さが「いやはやなんとも」である。
なんかとんでもない事件が次々に起こるのだが、そこに出てくる登場人物の妙な人間臭さがうまい具合に中和している感じ。
純な恋愛感情もプラスに。
部分部分で有り得ない超人的な描画も見受けられるが、そんなことは些末なものとして無視出来る。

集団自衛権や機密保護法が取り沙汰される昨今にもマッチした作品だ。
刊行は古い(2000年)んだけどね。
国のあり方、自衛隊の位置付けを考えさせられる内容は同じ著者による「亡国のイージス」とだぶる。
というか福井晴敏氏の処女作品だったんだ・・・納得。(^^;

ちなみに古書店で、これと他の2冊の併せて3冊240円(税込)で買ったのでした。(^^ゞ