北斗 ある殺人者の回心

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壮絶、悲惨、そして地獄。
外の世界は信用できない、幸せを望んではいけない、家のことは秘密にして話してはいけない。
愛を期待してはいけない、温もりなんてない、大人は信用してはいけない。
生まれてきてはいけない人間だった、子孫を残してはいけない人間だった、家族を持ってはいけない人間だった。
目立たない、陰のように、幽霊にように、空気のように生きていく。

北斗という名の少年の21年間の暗部をえぐり出されているのがこの作品。

虐待。
開放。
里親。
愛情。
死別。
詐欺。
復讐。
殺人。
裁判。
判決。

心を閉ざして本心を語ることなく、淡々と事実を受け入れ、罪を償う覚悟、死をもって代償とする決意。
揺るぎないはずだった。
裁判所で検察と弁護士が繰り広げる壮大な茶番劇を観る思いだったが、自分をなんとか地獄の淵から救い出そうとする幾多の人々、遺族と接することで、次第に心が揺れて本心を最後の最後にさらけ出した。
心からの悔恨、彼は回心した。
無期懲役、生きて償うことが許された瞬間だった。