明日の記憶

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ラストが美しいなぁ、美しくて、切なくて、むっちゃ悲しい。

「若年性アルツハイマー病」、癌だと思った医師からの告知は、そういう病名だった。
50歳にして、人生が終わったかのよう。
広告代理店営業部長で、一人娘は子を孕んで結婚前だというのに。
この主人公は告知を受けて、自身がアルツハイマー病であることを受け入れた。
紆余曲折はもちろんあったが。
自分が自分でないものになっていく恐怖がリアルに描かれている。
進行も早くて、どんどんと記憶が失われて行く。
会社には内緒にしていたにだが、出世欲に駆られた部下が密告して配置転換の憂き目にあったり、信頼して病状を教えた人に裏切られるという腹立たしいというか、その人たちに心根が哀しい。
ただ彼には理解あるものが職場に、家族にいたのが救いだった。
支えとなる人たちが身近にいるってことは大切だよねぇ。
何もかも、身近な人までも綺麗に忘れていく。
ラストは本当に悲しいんですよ。
でもその情景が美しい。
きっと彼は、幸せな気持ちのまま全てを忘れたんだろうなぁ。
確かにそこにあった想い、もう記憶には残らないけど、彼の胸の奥深い所には残ってるんだよ、きっと。