李歐
195
長編の大作でした。 「わが手に拳銃を」を下敷にして新たに書き下ろしたもの。 70年代から80年代にかけての大阪は十三に近い町工場が舞台。 阪大生だった一彰がアルバイト先で出会った一人の同い年の美少年「李歐」。 自ら「ギャングだ」と言ったが、謎の多い、バックグラウンドが怪しげな美貌の殺し屋ということだったが、一彰はそれとが別の人格を見ていた。 冷徹ではあるが、どこか人懐こい陽気な一面と、一彰を友として迎え入れてくれたことが現実を遠ざける。 一彰もまた、冷めた心を持ち、死を恐れず、鋼の加工に惹かれる変わった青年だった。 一彰の過去の記憶、密造拳銃のパーツ、李歐と共謀しての密輸拳銃奪取、町工場の再生、自身のムショ入り、出所しての町工場の跡取り、結婚をと息子の誕生と巡り巡って流れた15年の年月が哀しい。 李歐との約束、大陸へ連れ出してやるというその言葉の重み、15年にしてその思いがやっと叶えられるその目前での妻の爆死。 何ということだ! いや、久しぶりに小説読んでいて呆然としたわ。。。。 哀しい父と息子の二人だけの中国への渡航。 夢に見た大陸での、待ちわびた友との再開。 1ヶ月にして中国語を喋り出した息子、というくだりで胸に冷たい澱が沈む感じがした。 政治や国に翻弄された二人の青年の行き着いた先は、思い通りの夢を手に入れることができたのか? 多大な犠牲を払って・・・ 作品ではハッピー寄りの終わり方であったが、妻の死と残された息子のことを思うと、一彰の身勝手さに憤りも感じる。 あの時代のウネリがそうさせたのだろうか。 男同士の妖しい関係も見所?(^^; いい作品でした。 |