人質の朗読会

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最初に悲惨な結果が分かってしまう。
でもそれは本質ではない。

8人の日本人が旅行先のバスで拉致に遭い、人質として隔離される。
長い期間監禁された中で、彼らはお互いに自分のことを記し、朗読する。
未来のことではなく、過去のことについて皆に語り聞かせる。
その部分だけを切り取ってしまえば、単に過去の体験が綴られているに過ぎないが、人質というある種極限の状態で意識して過去を振り返り、その時に感じたこと、体験したことを慎み深く語るのだ。
彼らの語るそれは、どれも胸に響く。
それを聞いていた見張り役、突入の機会を図るべく盗聴して録音していた政府側の人間、彼らは何を感じていただろうか。
非日常下での人生最期の朗読会。
こんな結末になろうかとは思っていなかったであろう。
もう彼らの声は録音テープでしか聞けない。