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非常に短い短編集である。
7篇あるが、数ページしかない作品が2篇ほどあったりして、全部を合わせても200ページにも満たない。
それでも著者の言うところの「妄想」が凝縮されていて良い感じである。
その中でも著者が依頼されて困った "官能小説" が予想もしない展開で素晴らしい「バタフライ和文タイプ事務所」が秀逸。
具体的に淫らな行為が描かれているわけでもないのだが、かえって読むものの想像力に働きかけ十分に淫靡なのだ。
大学の医学部の学生らが持ち込む原稿を活字を一つ一つ拾い上げて打つわけだが、医学専門用語として "亀" だの "膣" だのおくびにも出さないような漢字がポンポンと出てくる。
そのうち、そういった活字が欠けて新しいものと交換をしに管理している人に赴くのだが、曇りガラスに遮られて顔が見えない男性と声だけのやり取りがゾクゾクさせる。(笑)
彼が欠けた活字を指でなぞるその仕草がアレを連想させる。
実に巧妙な仕掛けに舌を巻く。
そんな感じの大人の作品。