ノルウェイの森 上・下
72、73
Here Comes the Sun、Norwegian Wood 等、バックグラウンドでオートリバースよろしく頭ん中で鳴り響いておりましたが。(^^ゞ 主人公のトオルは37歳でドイツのハンブルク空港に着陸するところから物語が始まる。 着陸後に18年前、トオルが19歳から20歳になろうとしていた1969年の秋の出来事を思い出す。 私がまだ小学校にも通っていない頃だね。 トオルの唯一の親友だったキズキの元恋人の直子との偶然の再会。 当時はこの3人で遊んでいたが、キズキは17歳の時に自ら命を絶っていた。 それ以来の再会に戸惑いながらも、やがてトオルは直子に心惹かれて行く。 体を重ねること(たった1回)もあったが、結局彼女が彼を愛することはなかった。 やがて彼の元を離れた直子。 虚無感に囚われながらも大学の寮のプレイボーイの先輩に誘われるまま行きずりの女と寝るトオル。 そんな彼ではあったが、手紙を直子の実家宛に送り続けていた。 ようやく返事が来たのだが、彼女は大学を1年休学とし、神経を休めるために療養所で生活をしているのだと。 彼女は精神を病んでいたのだ。 もう少し回復するまで待ってて欲しいと書いてあった。 同じ大学に通う緑という書店屋の娘との出会いもあったが、トオルは直子のことが忘れられない。 一定の距離間を置いて人間関係を築く彼にとって直子は特別な存在だった。 直子との文通は続いた。 やがて直子から療養所に招待された。 同室の歳上のバツイチのレイコさんにも会った。 久しぶりの直子は美しい大人の成熟した女性になっていた。 そうして何回か療養所で直子と会って、文通して、直子の回復を待った。 でもトオルは緑との心の繋がりを深めていく。 直子も愛しいが、緑のことも愛していた。 レイコさんにその葛藤を打ち明けたりしていたのだが。 そんな時に直子が死んだ。 彼女も自ら命を絶った。 予想はしていたが最悪の結果だ。 読んでいた私も呆然とした。 だって前置きもなく最終章で「直子が死んでしまったあとでも、」だもんなぁ。 結局直子はキズキが死んでからずーっと病んだままで、トオルを含めて誰をも受け入れることもなくこの世を去ったのだなぁ。 自分で答えを見つけて身辺整理をして、それまでも一番輝いている姿を見せながら。 彼女はある種の再生を望んだということなのだろうか、と答えの無い問いかけをしてみたくなった。 この物語は、哀しいぐらい人の「死」がいっぱいだ。 それも自ら命を絶っている。 直子の姉、キズキ、親友の死、最愛の人の死、プレイボーイの永沢の恋人のハツミ、そして最愛の直子。 ついでに病死ではあるが緑の父。 哀しい死と釣り合わせるかのような性の営み。 性描写が思っていたよりも多い。 生=性ということか。 トオルは喪失感を克服できないまま現在に至っている気がする。 緑とはどうなったのだろう? 「Norwegian Wood」が引き金となった混乱は、これからも続くのだろうか? 37歳のトオルは幸せですか? うんざりするほどドイツには何をしに行ったのですか? 何年かのちに、もう一度読んでみたくなる作品でしたね。 生きた時代、境遇が違うけど、どこか共鳴するところがあったなぁ。 |