避暑地の猫

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無口な入院患者で通っていた主人公の男が医者に語った嘘か真か分からない話しとして描かれている。
軽井沢に別荘を持つオーナーが別荘番として離れに住まわせた家族と夏だけ訪れるオーナーの家族とのおぞましい交流が生々しい描写で書かれてます。
オーナーと別荘番の夫人との逢瀬、その夫人の娘との淫行、そして娘の弟(主人公)と娘(姉)との危ない関係。
事故を装ってオーナー夫人を殺害した。
計画性のない出来心ではあったが、いつも高みから見下す態度、自分の家族をこき使い罵倒され続けていたのが許せなかった。
やがて彼は隠された地下室での蛮行が明らかになった時、新たな殺意をオーナーに対して抱く。
それらの悪魔の所業のようなおどろおどろしい話で、倒錯した世界ではあったが、軽井沢の朝霧が美しく包みこみ、下品にはなっていない。
この物語で「猫」とは何かと問われるのだが、とんと分からなかった。
気まぐれ?
自由奔放?
しなやかで、美しい・・・
それって、主人公の姉のことだったのか??
恐ろしい女性だった。

  それにしても宮本輝氏って、このような作品も書いていたんですね。
ちょっとした驚きでした。