蒲生邸事件
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すごい長編です。 新書版で上下2段組530ページといえば大体の文量がわかるだろうか。 厚さ3cmを超えてるし・・・・ タイムトラベラーを扱ったサイコ物と言ってしまえばみもふたもないのだが、そういうSFチックなことを超越してこの作品が存在しているような気がします。 昭和の不穏な空気が流れ始める一つのきっかけとなった昭和11年2月26日のまさにその現場近くに飛ばされた18歳の大学受験に失敗した少年が主人公。 予備校の受験のために訪れた東京の宿泊先のホテルで火災に遭う。 逃げ遅れてもうダメだというときに一人のオッサンに腕をつかまれ闇を潜り抜けた先に落ちたところが上記の場所。 蒲生邸という蒲生元陸軍大将の庭先。 オッサンはそこの下男として働くことになっていた。 少年はその男の甥ということで転がり込む。 そこで繰り広げられる夢か現実かと思われた月日が、二・二六事件と後の呼ばれる軍事クーデターが、そしてそのさなかに起こった蒲生元陸軍大将の自決を巡る謎が読むものを74年前に引きずり込む。 SFで、歴史物語で、少年の成長記であった。 長いけど、長さを感じさせない魅力がこの作品にあった。 実に素晴らしい!(絶賛) タイムトラベラー物ではあるが、一味違った解釈があった。 過去を弄ると未来が変わる。 確かにそうであるのだけれど、この作品には「歴史事実を変えることはできても歴史を変えることはできない」と書かれていた。 誰かをを救う為に成した事でその人は救うことができたのだけど、別の日時に似た事象が起こって別の人が被害に遭う。 歴史という大きな流れの中で些末な変化はあるが大局的にみれば何も変わらないということ。 タイムトラベラーであるオッサンの見解が実に新鮮で納得してしまいました。 ※ 終章の素晴らしい出来にも喝采。(^^ゞ |