沈黙の町で

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これは・・・・なかなか読み応えにあるいい作品に出会えたなと。
テーマは重いです。
中学2年の少年に対する、いじめ、暴行、ゆすり、たかり、そして少年の死。
自殺か?事故死か?それとも・・・他殺??
やがて傷害罪による同級生2名の逮捕と2名の補導。
その差は14歳か否かで明暗を分けた。
小さな街で起こった衝撃の事件。
加害当事者とその親、被害家族、学校関係者、警察、検察、弁護士、マスコミ、クラスメート、それぞれの視点で事件が語られていく。
読んでて、それぞれの当事者になった気持ちで眺めてみると、そうだよなぁ、と妙に納得し、また心が揺れ動く。
もし自分が、自分の子供が、こう事件に巻き込まれたら・・・きっと冷静でいられないであろう自分の姿がありありと。(苦笑)
子供から大人への入口に立たされる感じの中学生の危うい心の揺れ、変遷がリアルだなぁっと。
子供は平気で嘘を付く。
それがどう周りに影響するのか、自分に跳ね返ってくるのか良く考えもせずに。
そこが怖い。
この作品は、そこのところを見事に描いているなぁっと。
事件の経過と並列して、途中から事件前の事象を追っかけ再生しているような描き方もいい。
最後の最後に事の真相が分かるのだが、分かってしまえば「なぁ〜んだ」となる。
だけど皆、真実を話さない。
意図してなくても本能的に面倒に巻き込まれたくない、自分だけいい子になりたくない等々で沈黙する。
「沈黙の町で」まさにそういうお話でした。