讃歌
13
マスコミと大衆の暴走、現実と仮想の区別なく、が痛いね。 でも核心は自分への絶望なんでしょうね。 結局、自ら人生を閉じてしまったから。 やるせない、救われないよね。 重い読後感だけが残ったわ。 主人公は、テレビ制作会社に勤める男。 ある日、無名のヴィオラ奏者の50がらみの女が奏でるクラシック音楽に感動し、しかも女の過酷な半生(ヴァイオリン奏者として天才と呼ばれた少女時代からアメリカへの留学先での挫折、恋敗れ、そして自殺未遂)を知るに至って、女のドキュメンタリー番組を制作する。 一般受けは爆発的に良いのだが、クラシック音楽に携わる人たちからの評価は辛い。 コンクール受賞歴の詐称や、レコード会社の社長の女だとか、結託してるとかでバッシングを受ける。 果たして女の音楽は本物なのか。 女に見え隠れする裏側を主人公が探る。 女の奏でるヴィオラが本物であることを願って。 大和撫子を絵に描いたような容貌とは裏腹に、女の気高さ、執着心、計算高さが見えてくる。 そして女は・・・それゆえ自分が許せなかったのだった。 やはり裏はあった。 が、女の奏でるヴィオラが人の心を揺さぶったのは事実で、嘘偽りがない。 だからこそやるせないのだよ。 |