星宿海への道

1

新春に相応しい読み応え有りの一冊でした。

物語の核になるのが瀬戸雅人という50過ぎの男の失踪。
中国の辺境地タクラマカン砂漠近郊の村から現地で買った自転車に乗って忽然と消息を絶ったらしい。
血の繋がらない弟の紀代志、雅人の子を宿して産んだ千春、雅人が中学生の頃に助け、紀代志と千春とを引き合わせた真喜子らが、「雅人」という人物像を明らかにしていく、あるいは真実の姿を欲していく。
辿りついたのは「星宿海」と呼ばれる源流。
それはしまなみ海道因島にあった。
真の母に聞かされていた瀬戸内の海に浮かぶ星のように点々と散らばる無数の島々と闇夜にきらめく星々とが融合して見せる絶景。
雅人はその光景と中国大陸を横断する大河黄河の源流の星宿海とを重ね合わせたのだろう。
が、消息を絶った場所から星宿海まではかなり離れているらしい。
雅人が求めたものとは何だったのか?
その謎は謎のまま残ったが、雅人のルーツが、人間模様がキチッと描かれ、感銘を受けた。
タクラマカン砂漠の圧倒的なスケールが、瀬戸内の海に浮かぶ無数の島々が、脳裏に浮かび自分のちっぽけさを思い知るのだった。(^^ゞ