神去なあなあ日常

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先生と母親にハメられて?高校を卒業すると同時に三重県の山奥にある「神去村」に放り込まれて林業をやらされる。
都会の横浜から携帯の電波も届かない真逆の過疎地へ。
いく度となく脱走を試みるも連れ戻される。
それでも月日を重ねるごとに、仕事が少しずつ上手くなれるごとに、都会では決して味わうことのない濃密な暮らしを体験する。
山や自然と泰然と向き合い、なるようにしかならないという悟りにも似た村人たちのおっとりとした生活は馴染むと心地良いものになっていた。
斜陽の林業がどういったものか、この作品を通してしっかりと語られている。
山は人の手を入れないと荒れてしまうこと、木を植え、木を育て、下草を刈り、枝を払い、間伐を行うという気が遠くなるような手間暇をかけ、それでも災害に遭うとあっというまに元の木阿弥に戻る。
寒かろうが暑かろうが、ダニに喰われ、ヤマヒルに血を吸われようとも手を休めることなく、黙々と働く彼らを見て主人公の少年は「カッコイイ」と思うのだ。
山から得て、山の神に畏敬の念を覚え、すべてを山に還す。
少年の成長して行く様が、自らがパソコンに書き留めた形で語れれる。
年上の美しいお姉さんに恋をしたその成り行きもまた楽しい。

「なあなあ」、それは「ゆっくり行こう」、「まあ落ち着け」などという意味らしい。

ちなみに「神去」は「かむさり」と読みます。
残念ながら「神去村」は実在しない架空の村のようです。
著者の祖父が津市美杉町で林業をやっていたそうなので、そこがモデルではないかと言われている方がいるようです。
真面目にキッチリと林業が描かれているのはそのためなんですね。