こころ
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何を今更「こころ」? 有名すぎるこの作品、実は彼の作品を一冊もまともに読んだことが無いもので。。。。 私の好きな作家さんである小路幸也氏の6/5に筑摩書房から出版される「話虫干」という作品で、図書館司書が夏目漱石「こゝろ」の物語に中に入り込んで活躍するストーリーなもんで、読んでいないと分からんと。 というわけで読んでみました。(^^; 「先生と私」、「両親と私」、「先生と遺書」の三章仕立てである。 一方的に「先生」と呼んで親しくなり、父の容体が悪くなて故郷に帰り、帰っている間に先生から遺書が届いて死んでしまったと。 主題は三章目の先生が書いた長い長い隠し続けてきた過去のこと。 先生の心の内をさらけ出した驚きの事実が記されていた。 下宿先の娘に好意を抱きながらも打ち明けられずに悶々としていたところ、同じ下宿に住む友人から娘が好きだと告白される。 危機感を覚えた先生は、彼に対して「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ」と言い放って娘との恋を諦めさせようとした。 そして娘の母親に娘を嫁に欲しいと恥もなく申し立てる。 その顛末を知った友人は先生を責めることなく自殺した。 先生は娘と結婚したが、ずーっと心にわだかまりを抱いたまま何十年も生き続けた。 その心の葛藤も胸の内を打ち明けられる唯一の人物として「私」を選んだのだった。 明治天皇の崩御、乃木大将の殉死の知らせに自分がどうすべきか悟り、自ら命を絶った先生。 この作品のテーマは「淋しさ」ですかね。 先生が自殺に追いやったK氏も、先生も、そして「私」も心の奥底に潜む淋しさを吐露してる。 人間て弱い生き物だなぁっとは単純には言えないけどね。 ま、そうであるなとは思う。 しかし、遺書たる手紙の終わりがこの作品の終わりという唐突さが却って余韻を残す結果になったなぁ。 昔に書かれているのに古さを感じさせない普遍的なものが文豪の文豪たる所以なのか。 さて、「話虫干」ではどのように展開されて行くのか楽しみである。 |