月と蟹
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第144回直木賞受賞作である。 小学生の少年期にありがちな秘密の場所、儀式、好奇心、背伸び、危うい心の揺らぎが、海辺の町を舞台にしてあっという間に通り過ぎて行く。 そんな様子が道尾氏らしい残酷さを伴って丁寧に描かれている。 少年は唯一の友と秘密の場所でヤドカリを飼う。 その中から特別な一匹を「ヤドカミさま」としてライターの火であぶって貝殻から追い出す。 そして動けないように固定して、願い事を唱えながら焼き殺す幼稚で残酷な儀式が印象的。 彼らは何を願ったのか? ある日、好意を寄せるクラスメイトの女子の父親と少年の母親の逢瀬が許し難く、女子の父親に死んで欲しいと願う。 でもそれが取り返しのつかないことになると悟った少年は必死でその願いが叶わないように信じられない行動に出る。 何ともやるせない気持ちになった。 遠い昔の懐かしい光景とダブって見えた。 ここまで波乱に満ちてはいなかったが、(^_^; |