共喰い

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第146回(平成23年度下半期) 芥川賞受賞作品ですね。
すっかり著者が有名人になってしまいましたが、もう一人の受賞者である円城さんの影が薄い。(^^;
作品に関しては、某都知事を巻き込んで賛否両論ありますが、個人的にはそんなに悪くないと思う。
確かに性的描写や暴力描写、最後には殺人なんて出てくるショッキングな作品で、ある種読む人を選ぶけどね。
思春期特有の鬱屈して不安定な精神状態の一形態として十分リアリティがあると思う。
人は見たくないものを意識的に避けようとするが、本作品はえぐるようにして描き出している。
暴力を振るうことでしか快感を得られない弱い父、その血を受け継いでいることに怯える少年、ケジメをつけるために行動に出た強い母、この親子関係の頂点に君臨したのは「母」だな。

もう一篇収録されいるのが「第三紀層の魚」で第144回芥川賞候補作である。
こちらは曾祖父と祖母と母と息子が織りなす「共喰い」とは一線を画する家族物語。
曾祖父と直接血の繋がりがあるには息子のみ。
同じ「血」を題材にしてても、ここまで違う作品を描けることは素晴らしいと思う。