クライマーズ・ハイ

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見事。
多岐に渡る登場人物の一人一人の個性が、存在感がリアル。
オノレとの戦い、同僚との戦い、組織との戦い、過去のしがらみとトラウマとの戦い、悔恨と苦悩と奮闘と、自分を取り戻し、家族と取り戻す壮大な物語。
地方新聞社の記者が主人公。
山好きの同僚と絶壁の崖を登ることを約束したその前日に日航ジャンボ機が御巣鷹山に激突した。
この事故のデスクを任された主人公は、同僚との約束を果たせなかった。
だが、約束した同僚は倒れて病院に横たわっていた。
新聞社に篭り、デスクを張った主人公は、史上最悪の飛行機事故の緊迫感、悲惨さを目の当たりにする。
この辺の描写は、事故当時に元新聞記者だった著者の成せる技。
新聞社内の派閥争いや部署間の軋轢、僻み妬み、足の引っ張りあい等が非常にに生々しい。
平行して、事故後から17年後の今、他界した同僚の一人息子と果たせなかった絶壁の崖を一緒に登るシーンが自分の息子と重ね合わせながら語られる。
記者魂を貫き通してスッタモンダしてた時とは対象的に、登頂後の語らいが爽やかで、すごくいい終わり方だった。