海辺のカフカ 上・下

135、136

この物語の主人公は、「世界で最もタフな15歳になる」ことを誓った15歳になったばかりの少年である、
父親からの呪縛から逃れるために家出をし、四国へと向かう。
そこで父親にかけられた呪い(父親を殺し、母親と姉を犯すこと)に向き合う。
四国で出会った私設図書館の司書をしている見た目は男性だが性別は女性という「非常に特別」な人物と、その図書館の管理人をしている中年女性らを通して少年から大人の世界へ踏み出す成長物語だな。
その過程で多くのものを失うのだけれど。
それと並行して読み書きの出来ない、けれども猫と会話ができ、独特の喋り方をする初老の男性の過去の事件、彫刻家殺し、本人の理解を超えた使命が、やがて「入り口の石」という共通キーワードで主人公と結びつく。
現実と虚実が入り乱れた不思議な、でも読後に不快感の無い、いい作品でした。
「カラスと呼ばれる少年」とは、主人公を客観的に見る分身なんだろうね。
カフカ」って、フランツ・カフカのことだし、チェコ語でカラスのことだったわ。