螢川・泥の河、道頓堀川

75、76

川三部作と言われているらしい。
「泥の河」で太宰治賞、「螢川」で芥川賞を取ってますね。
「泥の河」は昭和30年の大阪の堂島川土佐堀川が交わる安治川辺りが舞台。
けっして裕福ではないうどん屋の少年と、より貧しい家を持たないボロい船上で生活する少年との交流が描かれている。
船の少年の姉に淡い恋心も抱く。
でも役人から追い立てられるようにして、一家は船ごとどこかへ行ってしまった。
切なくてやるせない、この時代にまっとうに生きていく難しさが感じ取られた。

「螢川」は昭和37年の富山市が舞台。
厳しい冬の残雪と桜舞う春、そして蛍が乱舞する幻想的な初夏という季節の移ろいが厳しさと開放を思わせる。
また、人の死(父親と友人)と蒸せるような生命(蛍)の輝きとの対比が際立つ。

道頓堀川」は昭和44年の大阪の道頓堀川界隈が舞台。
21歳の大学生と彼の居候先の喫茶店店主を中心に繰り広げられる人間模様描かれていました。
道頓堀川のネオン輝く夜のケバケバしい装いとは別の昼の泥臭い淀んだ流れが、人情と愛憎、哀愁を映し出してます。