チッチと子

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直木賞作家である著者が、妻に先立たれた男やもめの売れない作家が直木賞(作品では直本賞)受賞するまでの苦悩の日々を軽いタッチで描いた父と子の物語である。
前半の軽めのタッチから、後半の年下の作家仲間が先に直本賞受賞するという悔しい体験、妻の死に疑問(事故ではなく自死ではなかったのか?)を抱き、一人苦悩する姿に移り変わり、妻の亡くなる直前に記録された1枚のDVDによって全て氷解していくところ、そういった一人の中年男性の揺れ動く心理が実によく描かれていたと思う。
これは父の成長物語(え?)でもあったのだよ。
当作品は、某新聞社の日曜版に連載されていたもの。
その時にリアルタイムで読んでいたものの、改めて一気に読み終えるとジーンとくる作品でした。
女の闘いが中途半端で終わっていたのが残念でしたけどね。(^^ゞ