オリンピックの身代金

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昭和39年(1964年)に開催された東京オリンピック、それを人質にして国家を敵に回した一人の優男の物語。
彼は東大出でそのまま大学院に入った優秀な学生であったが、オリンピック工事の人夫として働いていた兄の死を境に変わっていく。
貧困と富、地方と東京という大都会、搾取と不平等、次第に憤りを感じていく。
東京オリンピックは、その象徴だ。
やがて彼はダイナマイトを手に入れて警察に強迫文を送りつけ、爆破を繰り返してテロリスト化していく。
そんな彼の思想の変遷の描写が見事。
同級生だったTVマン、同郷のすりの名人、彼を追う刑事、それぞれの目を通して「彼」の本質に迫る。
刑事の執念と、公安のなりふり構わない強権に背筋の寒い思いもした。
なかなか読み応えのある一冊だった。

東京オリンピック、物心ついてないので全く覚えていません。(^^ゞ