八日目の蝉

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本来なら憎むべき偽りの母親に感情移入してしまい、「見つかるな、逃げ通せ!」と応援している自分がいた。
不倫相手の奥さんの赤ちゃんを誘拐して自分の子として3年半も逃亡しながら育てた犯罪者なのにね。
女は不倫相手の子を身篭ったが堕胎し、それが原因で二度と子供を産めないからだになっていたのだが、自分の子として育てるという暴挙が信じられない。
やがて女は逮捕され子供は本来の親元に戻ったが親も子もうまく暮らせない。
大学性になって妻子ある男と関係を持つ。
まるで偽りの母親がそうしたように。。。
偽りの母親といつか過ごした島に行く港で、その女とニアミスしていた。
互いに気づくことなく、それぞれの鬱積した状態から抜け出そうとしていた。
土の中から這い出て7日の命と言われている蝉。
八日まで生きたら、1日多く生きたら、ほかの蝉には見られなかったものを見ることができるかもしれない。
いいことばかりじゃなくても。