『分身』と『オーデュボンの祈り』

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2歳の年齢差があり、生まれ育った場所も異なる、でも殆ど同一人物と言っていい若い女性二人がそれぞれの出生の秘密を探るうちに思いもよらぬ過去の忌まわしい所業を知ることとなる。
権力者のエゴと医者の名誉欲に翻弄される二人。
真実の果てに見えたものは・・・・最後に二人はラベンダー畑の中で出会うのだった。
全く同じ顔をした女性。
もちろん双子なんかではない。
クローン・・・・
現代医学の神をも恐れぬ細胞操作に警鐘を鳴らした作品。

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コンビニ強盗に失敗して逮捕された主人公。
逮捕されるもののパトカーが事故を起こした隙に逃走。
気が付けば見知らぬアパートの一室にいた。
永く忘れ去られた仙台沖の孤島、鎖国して150年以上経つ不思議なところ。
日本語をしゃべる人間はいるが何かが違う。
島の外へ出ない島民、300kgを超えて動けない女、すべて反対のことを言う嘘つきの画家、殺人を犯すが逮捕されない男等々。
極め付きは、しゃべるし未来がわかる案山子だろう。
コイツの名が「優午」。
未来がわかるくせに自分の「死」を阻止できなかった変な案山子。
案山子が殺されるというのも変な話だが、主人公は案山子の死の謎を追う。
その過程で彼が言った不可解なことが一つ一つ解決していく。
現実離れした謎の多いお話。
だけど何か牧歌的な感じでもある。。。不思議な作品だ。

ちなみに題名にもなっていて作中にも出てくる「オーデュボン」は実在した鳥類研究者だ。
フルネームは「ジョン・ジェームズ・オーデュボン」といい、確かに精密な躍動感あふれる鳥の絵を残している。
これまた作中に出てくる「リョコウバト」も実在した鳥で、乱獲により絶滅しているのも本当のお話でした。