ヘヴン
222
『乳と卵』で芥川賞受賞後の初長編。 「苛め」を通して生とは?死とは?がテーマらしい。 中学生ですね。 斜視で小学校からの級友(友ではないが)と、その取り巻きたちから執拗に苛めを受ける少年が主人公。 で、その彼に私と「同類」の匂いを嗅ぎ取って手紙を寄こす "コジマ" という名の少女。 彼女も臭い、汚いと女子達に苛められていた。 彼女は「苛め」について変に前向き、というか達観しているというか、積極的に受け入れている。 彼の方は諦めている、決して受け入れているわけではないという感じ。 「驚愕と衝撃、圧倒的感動」と謳われているが、そんなもんかな? ましてや「美しい」なんて有り得ない! 驚愕も、衝撃も、ましてや感動すら覚えなかった。 「苛め」なんてこういうもんだよ。 驚愕を覚えるなんて言うヤツは現場を知らなさ過ぎ。 ただひたすら諦めだよ、親にも言えない、先生にも言えない、これが普通です。 「苛め」に動機なんていらない、ちょっとしたきっかけだけでいい、やりたいようにやるだけ。 作品に書かれていたそれらのこと、まさのその通りです。 だからこの作品の中で語られていることは、現場のほんの一つの事例を紹介しただけぐらいの程度だな。 斜視を治した彼は二度とコジマのいう「ヘヴン」を見ることはない。 自らの生い立ちの中で決然と「苛め」受け入れた彼女は、所詮彼とは同類ではなかったのだよ。 主人公よりもコジマの行く末を案じてしまった。 彼女の言う「ヘヴン」って、いったい何だったのだろう? その先に待っていたのは何だったんだろう?? 決然とはみせていたが、そこは14歳の少女だよ。 痛みがないわけない。 "希望" か "楽園" か、そんなもんあんなままでは絶対に手にできない。 |