ヘヴン

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『乳と卵』で芥川賞受賞後の初長編。
「苛め」を通して生とは?死とは?がテーマらしい。
中学生ですね。
斜視で小学校からの級友(友ではないが)と、その取り巻きたちから執拗に苛めを受ける少年が主人公。
で、その彼に私と「同類」の匂いを嗅ぎ取って手紙を寄こす "コジマ" という名の少女。
彼女も臭い、汚いと女子達に苛められていた。
彼女は「苛め」について変に前向き、というか達観しているというか、積極的に受け入れている。
彼の方は諦めている、決して受け入れているわけではないという感じ。
「驚愕と衝撃、圧倒的感動」と謳われているが、そんなもんかな?
ましてや「美しい」なんて有り得ない!
驚愕も、衝撃も、ましてや感動すら覚えなかった。
「苛め」なんてこういうもんだよ。
驚愕を覚えるなんて言うヤツは現場を知らなさ過ぎ。
ただひたすら諦めだよ、親にも言えない、先生にも言えない、これが普通です。
「苛め」に動機なんていらない、ちょっとしたきっかけだけでいい、やりたいようにやるだけ。
作品に書かれていたそれらのこと、まさのその通りです。
だからこの作品の中で語られていることは、現場のほんの一つの事例を紹介しただけぐらいの程度だな。
斜視を治した彼は二度とコジマのいう「ヘヴン」を見ることはない。
自らの生い立ちの中で決然と「苛め」受け入れた彼女は、所詮彼とは同類ではなかったのだよ。
主人公よりもコジマの行く末を案じてしまった。
彼女の言う「ヘヴン」って、いったい何だったのだろう?
その先に待っていたのは何だったんだろう??
決然とはみせていたが、そこは14歳の少女だよ。
痛みがないわけない。
"希望" か "楽園" か、そんなもんあんなままでは絶対に手にできない。