栄光なき凱旋 上・下

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いやぁ、大作でした。
読破するのに5日を要しました。(^^ゞ
いい作品でしたよ。
話は太平洋戦争が勃発する前のアメリカ西海岸にあるリトル・トウキョーとハワイの日系人たち。
ジロー・モリタ、ヘンリー・カワバタ、マット・フジワラの3人が入れ替わる形で展開されていく。
ハワイ時間1940年12月7日午前7時50分・・・・これを境に彼らを取り巻く状況が一変する。
日本軍による真珠湾奇襲攻撃。
日本人の血が流れる彼ら日系1世、2世は「ジャップ」、「イエロー・モンキー」と蔑まされる。 生粋のアメリカ人(白人)からだけでなくマイノリティーであるメキシコ人、中国人、韓国人(アジアの人たちは当然ですね)からも。
やがて西海岸に住む日系人たちは砂漠や有刺鉄線に囲まれた地域に強制収容される。
日系人の間でも一枚いたではなく日本寄り、アメリカ寄りでいがみ合う。
それでも彼らの「アメリカ人」としてのアイデンティティを守り通す為に兵役に志願(最初はそれすら認められなかった)していく、そういった苦難の道のりを丁寧に、リアルに描きとおしている。
戦場で人が人でなくなる様が実に痛い。
実際そうなのであろう。
参考文献をみても史実を土台にして描かれた作品であることが読み取れる。
白人のアメリカ人と同じように兵役に就き、日本人と戦い、結果を残せば「アメリカ人」として認められる、蔑まされることもなくなると信じていた彼らは見事に裏切られることを知る。
前線では白人たちより先に戦わされ、敵を蹴散らした後からジープに乗って堂々と自らの戦績のごとく白人らがやってくるのを見るにつけ、やりきれない怒りが、報われない努力が読む者に訴えかける。
やがて戦争が終わって、胸を張って帰国しても何も変わらないアメリカがそこにあった。
幾多の日系人の血が流された事実なんかは同でもいいように扱われ、勝者はあくまでもマイノリティたちではなく白人なんだと思い知らされる。
「栄光なき凱旋」、まさにそのとおりであった。
物語の最後、帰国したジロー・モリタは裁判に掛けられる。
彼は軍務に就く前に一人の日系2世を過失で殺してしまっていた、その罪で。
有罪判決を受けて12年の歳月を檻の中で過ごし、仮出所した時にはマットもヘンリーも亡くなっていた。
隻腕のヘンリーは、強盗に出くわして素手で立ちふさがり射殺された。
もう軍務に就く理由もないのに朝鮮戦争のさなかに中国軍の砲弾の餌食となったマット。
ジローは思う、死に場所を求めていた自分だけが生き残った。
まさに「栄光なき凱旋」。
あんなに日本という国を、日本人を、日本人の血を嫌っていたジロー。
それでも最後に彼なりに落としどころを見つけたのか?
ハワイのとある埠頭の突端で「この港と遥か先の洋上で散った多くの兵士のために、踵を合わせて姿勢を正した。父と母が生まれ育ったもうひとつの祖国にも届けと、胸を張って敬礼した。」とあった。