廃用身

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廃用身、こんな言葉があるなんて知りませんでした。
「医学用語で、脳梗塞などの麻痺で回復の見込みがない手足のこと」(本文より)だそうです。
久坂部羊氏のデビュー作で凝った構成をとっておられます。
本の中に架空の出版物が丸々入っている感じ。
最後にはご丁寧に架空の著者略歴、発行者・発行所、ISBN番号なんかあったりして、最初はわけが分からず何度も見返してみたり。(^_^;
話は、ある外科医が医院長を務める老人デイケア・クリニックでの廃用身となった手足の切断療法を詳細に書いた「遺稿」と、それに対する編集部注釈の2部構成となっている。
老人介護の悲惨さ、痴呆老人に対する家族の虐待等々、想像を遥かに超えたリアリティで読む者に迫ってくる感じ。
本人にも意のままにならず、また重くて間接の自由がきかずに介護の邪魔になる回復し得ない四肢を切断する通称「Aケア」で、本人も介護する周りの者にも良いこと尽くめのようなちょっと奇異で危ないお話。
それに対するマスコミの凄まじいバッシングもリアリティ有り有りで怖い。
なかなか面白い(と書けば語弊があるか・・・)本でした。