風に舞いあがるビニールシート
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表題作の「風に舞いあがるビニールシート」は 、第135回直木賞受賞作。 ビニールシートは、困窮する難民の象徴。 肩寄せ合い、必死にそこに留まろうとしても簡単に煽られ、吹き飛ばされ、翻弄される。 そんな彼らを救うべく国連難民高等弁務官(UNHCR)になって難民支援のために各国を飛び回るエド。 そこの事務職員として採用された里佳との恋愛、結婚、すれ違い、そして破局。 この二人の夫婦のありようが難しい。 やがて元夫は凶弾にに倒れる。 後に元夫の死に際を伝え聞いた里佳は、元夫の意思の本質を、愛を悟る。 事務職員として遠くから他人事のように眺めるのではなく、現地に赴任し、風に飛ばされそうなビニールシートを掴んで押さえようとするのであった。 このような、お金よりも大切な何かのために一生懸命に生きる人たちを描いた作品が他に5編。 愚かさや、強かさ、弱さをさらけ出しながらも何か引きつけて止まない。 いい作品たちでした。 |