冷めない紅茶

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中編が2編。
「冷めない紅茶」
主人公の女性(20代後半)が死について考えている。
過去にあった死を述懐している。
その中で特別な死、中学時代の同級生の葬式で再会したK君との不思議な関係が目を引く。
彼は既婚、それも中学時代の図書室の司書の先生と。(え?)
主人公は入籍はしていないが、住宅会社のセールスをしている男と暮らしている。
ここから不倫に発展して行くのか?と思いきや違ったわ。
何とも言えない空間というか空気感というかが支配している。
なんとも中途半端な読後感でした。

「ダイヴィング・プール」。
父が神父で、両親共々恵まれない子供達を引き取って教会に隣接する "ひかり園" で面倒をみている。
そこの娘が主人公(高校生)なのだが、複雑な生活環境で育ったようだ。
同じ屋根の下で生活していても彼らには両親が実質的にいない。
彼女にはもちろんいるのだが、普通の子供なら享受できたであろう独占的な愛情の元で育っていんじゃないか。
屈折した感情が垣間見られる。
同じ高校に通う純君は飛び込みの選手で、飛び込み台のあるプールの観客席でひっそりと観戦するのが好き。
彼に好意を抱いているが、彼のしなやかな筋肉に惚れてる感じ。
そんな彼女が密かに行っているのが幼児虐待。
とこりがある日、純君を観戦しに行った先で彼にそのことを指摘されてしまう。
責めるでもなく淡々とやんわりと諭すように。
彼女の歪な "恋" が終わった瞬間だった。
思春期の危うい心の揺れが描き出されている作品でした。