完璧な病室

161

表題作の「完璧な病室」は、主人公の女性がたった一人の肉親である不治の病に罹った弟と過ごす無機物な病室での日常が描かれている。
精神を病んでいた母との暮らしの中で有機物、言い換えれば生活感そのものを毛嫌いしていた。
相反する二つの間にさまよう彼女は、やがて弟の主治医と心を通わせる。
決して性的な結びつきではなかったが、かえって官能的だった。
やがて弟は病室と同化するように無機物へと昇華した。
姉弟愛に包まれた暖かさがより一層哀しくさせる作品でした。

もう一作「揚羽蝶が壊れる時」を収録。
ちなみに借りた単行本は絶版。
なのでAmazonの紹介画像は文庫本のです。