骸骨ビルの庭 上・下
32、33
大阪の十三(ローカルぢゃない人に。「じゅうそう」と読むんですよー!)に「骸骨ビル」呼ばれる3階建ての重厚な造りのビルヂングが舞台。 主人公は、大手電機メーカーを退職して、骸骨ビルの住人を穏便に立ち退かせる為の管理人として、そのビルに住まう。 そこの住人たちとの交流を通して得られた尊い話を日記形式で読ませる。 もう今では出会うことのないような、純真無欲な二人が、戦争孤児や親に捨てられた子供達を引き取り、立派な人間になるよう育て上げる。 その子供達が成人して職を得て、またこのビルに舞い戻ってきた。 親代わりの一人が無実の罪を着せられ、無念のうちに亡くなった。 その罪を着せたのが男が育てた女というのが悲しい。 ビルの権利を奪取しようとする男と結託してたのだ。 育て親の無実を晴らすために居座る彼らを主人公は追い出すことができない。 でも彼らと過ごし、会話し、彼らの語る育て親のことを記録していくうちに、自分が動いて複雑に絡まった糸をほぐすがごとくこのビルを穏便に明け渡してくれるよう働きかける。 かつて、彼らが育てた骸骨ビルの庭の畑で採れる野菜たち。 彼らの幼少期に多大な影響を与えたその庭で、今また主人公は畑作りに精を出す。 彼らがどんな思いで畑作りをしていたのかをなぞるように、彼らにもう一度思い起こさせるために。 明け渡しの当日、もう一人の育て親が、このビルで育った子供達を招待し、開かずの扉を壊して中に招き入れ、そこで亡くなった育て親の慈愛に満ちた真意を悟らせる。 なんも心温まる、壮大な人間物語でした。 |