灰色の北壁

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内定をもらった4回生の夏に、初めて本格的な山に登った。
猿倉荘まで車で入り、そこから白馬沢沿いを登り、大雪渓を経て白馬岳へ。
その日は白馬山荘近くでテント泊。
翌日、杓子岳を経て鑓ケ岳の山小屋近くでテント泊・・・そこで嵐に遭い、山小屋に逃げ込んだ。
翌朝現場に戻ると、中に残した荷物諸とも谷へテントが滑落してた。(呆然)
下山途中に鑓温泉に浸かった。
山に登った目的は、星の写真を撮りに行ったんですね。
30〜40Lぐらいのザックに、シュラフ、着替え、食糧、一眼レフカメラ、交換レンズ、三脚、望遠鏡、ポータブル赤道儀で20kg超。
まぁ、本格には程遠いトレッキングに毛の生えた程度のもんでしたが、いい思い出です。
って、何の話だ?(^^;

これは山岳小説ですね。f(^_^;
中編が3編、いずれも読み応えありました。
著者は山登りしてないんですね。
で、これだけのものが書ける。
すごいと思う。
「黒部の羆」は、若かりし頃の過ちと同じことをさせない、元山岳警備隊の山小屋の親父の話。
「灰色の北壁」は、北壁初制覇の偉業疑惑の真相の話。
「雪の慰霊碑」は、雪崩で亡くなった息子の許しを得るために同じ山に登る男の話。
何を許してもらうのかがミソ。
いずれの作品も風景描写が、心理描写が、本当に素晴らしい。
人間の業や性も圧倒的な山の前では無に帰すのだ。
もう少し膨らませて長編として読みたい気もするが、ちょうど良い塩梅なのだろう。