発火点

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真保さん、こういう作品も描けるんですね。
って、何を上から目線。(^^ゞ
12歳の子供だった頃、21歳にはなったが大人になり切れない青年。
そんな主人公の胸の内を各章交互に書かれています。
12歳だった頃、子供なりに大人のことを理解し、母を守ろうとしていた。
家族を捨てようとした父、そんな父を父の旧友が殺した。
そんな暗い過去を引きずって21歳になったいい大人が、まるで世界中が敵だとばかりに反発し、自分勝手に振舞う。
誰もわかってくれない。
そらそうだろう、自ら語ろうとしない者のことなどわかる筈もない。
気付いていながらも素直になれない主人公は、生まれ育った海辺の町に戻り、失われた9年を取りもどす「旅」に出る。
出所した父を殺した男との再開。
人を殺すとは思えない男が何をきっかけにそうさせたのか?
自分の過去と向き合いながら男の父を殺さずにはいられなかった、その「発火点」を探る旅でもあった。
最後まで表に出るこのない父の過去がそうさせたのか?
事実はわからず仕舞い。
でも旅は終わった。
そして大人になった主人公は新たな旅を、今度は一人ではない旅を決意する。
決意は実ったのだろうか・・・
いい作品でした。