天空の蜂
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なかなかの読み応えでした。 日本の危機管理に警鐘を鳴らす作品といえば大袈裟か? いや、そんなことはあるまい。 なくてはならないモノなのに実際に関わることになると態度が変わってしまう、そんな存在が最低2つある。 それがこの作品に出てきます。 原子力発電所と自衛隊。 「天空の蜂」では前者が主で、副次的に後者が関係してくる。 内容を要約してみると、防衛庁に納入する前の試験飛行を控えた巨大ヘリコプターが何者かによって奪われる。 それも無人で遠隔操作によって。 そして高速増殖炉の最新式原発の上空に移動してホバリング。 やがて犯人から全国の原発を即時破壊して停止せよ、さもなくばヘリを高速増殖炉の原発に墜落させると脅迫してきた。 ヘリには爆薬が積んであるという。 ついでに(これは犯人の想定外であったのだが)子供まで。 犯人との交渉で全国の原発の一時停止を条件に子供を救助することを認めるが、その救助方法が手に汗握るというか普通無理だろう。 ヘリに積んでいる燃料が切れるともちろん高速増殖炉の原発の上に落下するし、その原発だけは稼動し続けないと落とすという。 国が原発の機能を破壊して停止しない限りとんでもないことが起こる・・・はずなのだが。 警察の犯人探し、警察と自衛隊との力関係、反原発団体との関係、電力会社と国の詭弁等々。 物語では犯人を比較的あっさりとばらしている。 犯人探しがメインではない。 犯行に至るまでの人間ドラマが、そして「俺は関係ないよ」、「私には分かんない」という大多数の国民に向けての警鐘がメインだろう。 二酸化炭素排出問題で再び脚光を浴びる形となった原子力発電。 もちろん二酸化炭なんて出さない、だけどもっと恐ろしいものを吐き出す。 放射能の恐ろしさは頭では理解できているはず、なのに原子力発電には無頓着なのはなぜか? これは著者の蜂の一刺しなのだった。 |