模倣犯

久しぶりに[読書]をUp。
けっして読んでいなかったわけではない。
読んでいたけど、上下2巻で1422ページもの大作である。
文庫本も売られているが、5冊に分割である。
どれだけの文章量かお察しいただけるかと思う。

21,22



作者は宮部みゆき
読むのは『火車』に続く2作品目である。
この作品は映画化されているようだが、その内容は知らない。
まったく先入観なしで読めるのはいいことだ。

さて、この『模倣犯』は3部構成となっている。
第一部で被害者となる人たちが語られ、犯人の一部が事故死するところで終わっている。
第二部で犯人側の視点で犯罪行為が語られている。
第三部でリーダー格の自作自演が展開されている。
若い女性を拉致して言葉巧みに個人情報を聞き出し、愉しみ、そして殺害していく。
そして聞き出した情報を元に被害者の家族を揺さぶってまた愉しむという、まるでグリコのアーモンドキャラメルみたいだ。(違)
劇場型、イベント型の犯罪行為が無慈悲に描かれている。
第一部で語られる被害者となる登場人物の緻密な描写が後でしっかり生きていてムダがない。
直接この犯罪の被害者ではないが第一発見者であり、過去において家族を惨殺され、その後も周りで展開されていく「死」に遭遇する数奇な運命の少年もスパイスとして効いている。
「ピース」と呼ばれる主人公のおぞましい行為に苛立ちと嫌悪感を読む者に覚えさせる。
題名の『模倣犯』、いつも作品を読むときに題名が作品の中にどう表現されているのかを感じながら読み進めていくのだが、最後の最後ラスト50ページ以降にならないと判らなかった。
それも自分が想像していたこととはまったく別の展開で・・・・まいりました。
そういうことだったのね。。。。

この作品でちょっと納得できなかったことが2つほど。
別に大したことではないのだけれど、ジャーナリストモドキの女性が最後に大活躍するのだが、離婚寸前だった状況が一変して復縁するところ。
現実的には有り得ないんじゃないかと。
それと「ピース」の最後の壊れ方が唐突で。
ジャーナリストモドキの作戦通りなんだけどね、作戦通り過ぎて。(^_^;
あんなに慎重で警戒心の強いヤツが「サル真似」と "題名" のキーワードでスイッチオン状態になるとは。
ま、スイッチオンの伏線は張ってあったけどね、幕切れが結構あっけなかった。
でもリアルな世界では自尊心が強いと案外そうなるのかもね。
人間は所詮脆い生き物だと。(^^ゞ